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2024.04.02 / トピックス

  • 技術者インタビュー

【徹底検証】10G回線でどこまで速くなる?スイッチ・PC側の限界は?

ファイルの大容量化・Web会議の普及など、ビジネススタイルが変わり続けるなか、オフィスにおいて重要度が高まっているのがインターネット回線。広帯域化が進み、最大通信速度10Gbpsを謳う「10G回線」にも注目が集まっています。一方で、10G回線を導入した際に、どこまで速度が出るのかも気になるところです。そこでコムネットシステムでは、10G回線の速度を計測し、様々な環境での違いを検証しました。その結果とあわせて、10G回線の効果的な使い方や、10G回線導入前にチェックしたいポイントなどをエンジニア目線でまとめて解説します。

【検証環境】 今回の検証では、上下最大10Gbpsの法人向け高速インターネットサービスを利用、10G対応ルーターとして「Firebox M690」を設置し、その配下の機器構成で1G/5G/10G(有線)、無線(Wi-Fi)と計4パターンで検証をおこないました。また、インターネットの速度は環境によって大きく異なるケースもあるため、2種類のテストサイトを利用して計測しました。

■ 利用PC ・プロセッサ:Intel(R) Core(TM) i5-1335U 1.30GHz
・実装RAM:16.0GB(15.6GB使用可能)
・システム:64ビット オペレーティングシステム、x64ベース プロセッサ
・LAN 10Gインターフェース:QNA-T310G1T(※)
※標準では10G非対応だったため、インターフェースを追加

■ 速度計測サイト ・SPEED TEST(https://www.speedtest.net/ja)
・Google インターネット速度テスト

【検証1】1Gbps接続の場合 まずは、1Gbpsで接続するケースです。現状、オフィスなどで一般的に利用されている構成と言えるでしょう。ここでは、Firebox M690の配下にマルチギガビットスイッチ、1Gbps対応のハブを配置し、PCを接続しました。PCのプロパティで1.0Gbpsの速度が出ていることを確認したうえで、各テストサイトで計測したところ、下記の結果となりました。Googleのみ若干遅い結果となりましたが、おおむね1Gbpsを使えている状態だと分かります。

【検証2】5Gbps接続の場合 続いて、5Gbps接続です。マルチギガビットスイッチの配下にPCを設置し、5Gbpsで接続。こちらもPCのプロパティでは5.0Gbpsの速度が出ていることを確認しましたが、実際に計測すると、テストサイトによってばらつきがありました。また、1Gbpsを超える速度は計測されたものの、5Gbpsに近い値までは出ない……という結果となりました。

【検証3】10Gbps接続の場合 さらにマルチギガビットスイッチに10Gbpsで接続したらどうなるのかを検証します。こちらもPCのプロパティで10.0Gbpsの速度を確認したうえで計測しましたが、結果は下表のとおりです。速度サイト側の負荷でも速度が流動的になってしまうため、5Gと10Gは変わらないという結果になりました。

【検証4】無線接続の場合 ここまではPCを有線LANでつないで計測しましたが、最近ではPCもWi-Fiで接続して利用するケースが増えていることから、Wi-Fiで接続したケースも検証しました。
無線アクセスポイントにはCisco Merakiシリーズのハイグレード機種「MR56」を利用。周波数5GHz、チャネル幅80MHzと現状可能な最大値に設定しました。ここでポイントとなるのがチャネル幅です。Wi-Fi 6では160MHzまで対応していますが、環境の制約で設定できず、80MHzの設定としました。チャネル幅と最大スループットは連携しており、チャネル幅80MHzでは、1.3Mbpsまでという制約がかかります。
また、PC側のインターフェースとしては、Wi-Fi 6対応している内蔵Wi-Fiアダプタにて検証を行なっております。この状態で、PCのプロパティでは1.2Gbpsとほぼ最大値に近い数字を確認できました。さらに、アクセスポイント側の速度は、5Gbpsに近いスピードが出ていることも確認できます。

下りこそ、有線1Gbpsで接続した際と同程度ではあるものの、上りはやや遅い結果に。無線通信は電波の安定性や干渉などの問題もあり、有線と比べて速度が出にくい、ということが数字からも明らかになりました。ちなみに、チャネル幅の設定を変更して計測した結果は下表のとおりです。

それぞれ、チャネル幅40MHzでは600Mbpsまで、200MHzでは289Mbpsまでというスループットの制限にあわせた速度……という当然と言えば当然の結果となりました。

<検証結果>機器を10G対応しても、10Gbpsの速度は出ない 「10G回線を使うならば、スイッチなどのネットワーク機器も10G対応が必要」とされますが、スイッチをすべて10G対応しても、PCのスペックやNICとの相性などがあるのか、一定以上の速度は出ないという結果になりました。つまり、10G回線で道路が広くなっても、車の性能がネックになり、出せる速度には限界があるということ。ただ、“渋滞”が解消されて快適になる、といった効果は期待できるでしょう。

10G回線検討の前に、チェックしたいポイント

また、今回の検証を通して「インターネットが遅い、Web会議が不安定」といったときに、最初にチェックしたいポイントも見えてきました。まず見極めたいのは、「有線接続か、無線接続(Wi-Fi)か」です。今回、検証を担当したエンジニアの吉野も、「検証結果でも、Wi-Fiで接続した場合は、Wi-Fi側の制限があるうえ、周囲の影響も受けやすく、そこまで速度が出ませんでした。有線接続の方が安定して速度が出るため、インターネットが遅い・不安定と悩むなら、まずは有線接続への切替をお勧めします」と話します。またWi-Fiでは、無線アクセスポイントの設定も影響します。チャネル幅の設定によってスループットの制約があり、当然その制限内の速度しか出ないことも検証で確認されています。20MHz/40MHzなど少ない設定になっていないかは、チェックしておきたいポイントです。

「Wi-Fiでは、アクセスポイントの機器が古くてボトルネックになっている、そもそも数が足りていない、といったケースも多く見られます。もちろんそのままでは10G回線を導入しても、それを活かした速度は出ませんから、こういった機器の状況もあわせて見直すことが大切です(吉野)」とも話します。このような継続的な機器の見直しが大変、次々登場する機種に入れ替えていくのは無理がある……という場合には、ネットワーク機器をサブスクで利用できるコムネットシステムの「MALUTO」なども有効な選択肢です。MALUTOでは、UTMやスイッチとあわせて、Wi-Fiアクセスポイントも選択でき、月額費用のなかで新機種への入れ替えも対応可能。機器の陳腐化・老朽化を避け、その時々の状況に合わせた機器の選定や設定変更を柔軟に行うことができるため、快適なインターネット環境の維持をサポートします。 一方、有線接続の場合は、スイッチなどの機器がネックとなっている可能性が考えられます。スイッチの最大スループットがいくつになっているか、また、1台のスイッチに多くのPCをつなぎすぎていないか、などがチェックポイントとなります。

PC1台で10Gbpsを目指すのではなく、“全員が快適”な構成がポイントに 最後に、今回の検証をこう振り返りました。「ネットワーク機器のスループットを上げれば、その分どんどん速くなる、というわけではないと分かりました。また、一般的なオフィス業務であれば、PC側は1Gbps以上の速度は不要かと思います。あわせてPC側の速度をどんどん上げるのではなく、PCは1Gbpsに抑えたうえで、オフィス内の全員が平等に1Gbpsを使えるような構成を考えるとよいのではないでしょうか。そのうえで、10G回線も含めた回線増強を検討する、というステップをお勧めしたいです(吉野)」と話します。
「10G回線」というインパクトは大きく、期待が膨らむ一方で、スイッチやPCなど環境側の限界もきちんと踏まえて検討することは不可欠です。いきなり10G対応の機器で揃えても、一般的なPCではそれに対応するほどの速度は出ない、というなかで、10G回線をどう「使いこなしていくか」を踏まえて、社内全体のネットワークポリシーを今一度慎重に考える必要がありそうです。

まとめ

本記事では、エンジニア目線での10G回線導入にあたってのポイントや構築した結果をもとにした10G導入の勧めをご紹介しました。
弊社では、製品の導入をはじめ、導入後の運用管理までご支援するサービスをご用意しております。 製品に関してだけでなく、事例など気になりましたら、お気軽にお問合せフォームからご連絡ください。

  • 回線速度を検討する場合はまず機器の見直しから
  • 一般的なオフィス業務であれば、PC側は1Gbps以上の速度は不要
  • オフィス内の全員が平等に1Gbpsを使えるような構成を考えるとよい

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